治療の方針

治療の方針

生活習慣病の治療

高血圧・高脂血症・糖尿病などのいわゆる生活習慣病は、心筋梗塞や脳卒中の発症に関わる危険因子ですが、いずれもこれらの疾患がある程度進行したり発症するまでは自覚症状がないため放置されていることが現在でも多いようです。
そのため生活習慣病の怖さは、知らぬ間に動脈硬化を進展させ、ある日突然に、死に至らしめる心筋梗塞や脳卒中を引き起こす事にあります。
そのため欧米では、特に高血圧症については「サイレントキラー」と呼ばれています。

脳卒中になるメカニズム

またこれら生活習慣病(高血圧・高脂血症・糖尿病など)の一つ一つの因子は軽度であっても、2つ以上合併すると動脈硬化は非常に早く進展します。


欧米の大規模な疫学研究により、これらの3つの危険因子を持たない人に比べ、心筋梗塞等の虚血性心疾患の発症率は高血圧あるいは糖尿病を単独に有する人が2倍、高血圧と糖尿病の両方を有する人は8倍、高血圧・高脂血症・糖尿病のすべてを有する人はなんと20倍という結果が出ています。 またアメリカの各年代を対象にした調査で、フラミンガム研究では、若年者においては高脂血症が心筋梗塞の危険因子として重要であること、JAMIS研究の結果からは高齢者においては心筋梗塞の発症に高血圧と喫煙が大きく影響している事が示されています。


このようにこれら生活習慣病を治療するにあたっては、他の危険因子の有無そして有る場合にはそれらの治療を合わせて行う必要があります。
例えば生活習慣病の中で最も日常的に見受けられる疾患である高血圧(日本では約3000万人いると言われています)に関しては、心血管疾患のリスクを血圧分類と同時に、高血圧以外の糖尿病・高脂血症などの危険因子、標的臓器障害や循環器関連合併症(心・脳血管・腎等の合併症)などと組み合わせる事により、低リスク、中等リスク、高リスク、超高リスクの4段階に層別化し、血圧だけでなく各患者のリスクの段階を加味して管理方針の決定に役立てるようになってきています。
※最近の高血圧の診断と治療に関する米国合同委員会の報告(JNC)や世界保健機構ー国際高血圧学会(WHO-ISH)による高血圧治療のガイドラインによる。


高血圧の定義に関しては、最近の高血圧治療のガイドラインは、2017年に発表された米国合同委員会報告(JNC-7)で140/90mmHgから130/80mmHg以上に引き下げられ、2018年に発表された欧州高血圧学会のガイドラインでも高血圧の基準値は140/90mmHgに据え置かれたものの、降圧目標は130/80mmHg以下に引き下げられました。そして降圧目標は、高齢者でも例外なく130/80mmHg未満にされました。さらにその高血圧の診断にあたっては、家庭血圧と24時間自由行動下血圧測定(ambulatory blood pressure monitoring; ABPM)による高血圧診断が重要となっております。そして24時間にわたる厳格な血圧コントロールが脳血管疾患や心疾患等のイベント抑制につながると推奨されています。そして日本を含むアジア諸国では、高血圧とより関連の深い脳卒中や非虚血性心不全が多く、さらに循環器リスクとして血圧の影響が欧米諸国より強いことから厳格な血圧コントロールはアジア人においてこそ有用であると考えられます。

このように最近のガイドラインによれば高血圧、あるいは血圧コントロール不良の方が増加することになりますが、必ずしも降圧剤により治療強化をお勧めするものではありません。まずは、生活環境の見直し、生活習慣の徹底した管理や自己修正が第一となります。さらに起床時家庭血圧の自己測定を行い140/90mmHg以上であれば薬物療法の開始が必要となります。

高血圧

その場合もただ血圧の薬を飲んで下げれば良いと言うのでなく、個々の患者様の年齢・性別・他の危険因子の有無とその進展具合等に合わせて、至適血圧を決め血圧をどの程度まで下げるべきか目標レベルを設定し、さらにどの様に生活指導を継続し、どの様な降圧剤を選択するかを考える必要があります。


当院では、血液検査や超音波検査(心臓エコー法・血管のB-モードエコー法)また最新の動脈硬化診断装置であるFMDやフォルムを用いて現在の動脈硬化の状態を把握し、将来の心・脳血管疾患の発症をシュミレーションいたします。
その上で個々の患者様にあったテーラーメイド治療を提供いたします。